2002年4月に発刊された「百年の愚行」という古本を自習室の図書コーナーに追加いたしました。
「百年の愚行」は、「20世紀を振り返り、21世紀の地球を考える100枚の写真」というサブタイトルがついています。海・川・湖沼、大気・大地、動物、大量生産・大量消費、核・テクノロジー、戦争、差別・迫害、難民や貧困というあらゆるものに目を向け、歴史に刻まれた写真で構成されています。衝撃的な写真の数々に、人間の愚かさが伝わってきます。
この本が発刊されたのは21年前。冒頭の文章「この100年に変わったこと」では、20世紀初頭の総人口は15〜16億人、2020年には60億人になったと綴られていました。
先日のとある朝、インドの人口が世界最多の14億人を超え、年内にも中国を290万人上回るというニュースが流れていました。2022年11月、世界の総人口は80億人を突破しました。この本が発刊されてから約20年後、世界の総人口はさらに20億人も増えているというから驚きです。
人間がこれだけ大きく変化しているからには、同じように、私たちの住む地球の環境も信じられない速度で変化しているのかも知れません。
身近なところでは、ここ最近の気候でさえ、さらなる温暖化を実感します。4月だというのに夏日が続き、桜の開花が早まっている。このまま盛夏を迎えたらどうなってしまうのだろうか。そんなふうに考えてしまうほど、たかだか自分が生きている数十年の間でさえ大きく気候は変化したのだと感じます。
環境は変わり続けるものの、人間の争いの歴史はそれほど変わりがないのが悲しい現実です。世界のパンデミックの最中に、ウクライナに侵攻したロシア。どうしてこんなに大変な時に。そしてコロナに打ちひしがれた日本をはじめ先進国に物価高騰をもたらしています。20年前、湾岸戦争があり、その前にはベトナム戦争、その前は第二次世界大戦と、そのような争いの歴史も写真は、瞬間瞬間を切り取って、後世に残しました。今のように便利な機材があったわけではないですが、1枚1枚にこめられたカメラマンの何かを残さなければという思いが伝わってくるようです。
環境は与えられるものではなく、自らがつくりだすものであるならば、私たちは今、何ができるのでしょうか。
本書では、西ドイツ(当時)の宇宙飛行士ウルフ・マーボルトが宇宙から眺めた地球についてこう語ったと記されています。
「生まれてはじめて、私は水平線がまるくカーブしているのを見た。カーブを強調しているのは、ダークブルーの光の細い筋。それこそ地球を取り巻く大気である。これは今まで私がさんざん聞かされてきたような、果てしなく広がる空気の層ではなかった。私はその頼りない外見に戦慄を覚えた」
本の帯に、先日亡くなられた坂本龍一さんの言葉がありました。
人類は自然にも自身にも大きなツケをもたらした。これらの問題群をいかに解決していくか。われわれは現在その分水嶺にいる。
そして、この本の最後、「これからの100年に向けて」では、ブッダのこんな言葉で締めくくられています。
執着するもとのもののない人は、憂うることがない
まだSDGsという言葉もなかった時代の本です。自習室の本棚に置いています。
もしよかったら、パラパラとめくって、生きるヒントにしてもらえればと思います。